こんにちは、マニです。
サラリーマンをしながら地方でアパートを一棟所有しています。
本業は建築現場の現場監督です。
第4回目の今回は、リフォームや大規模修繕を依頼するときには切っても切れない「現地調査」についてです。
工事の見積もりを依頼すると、ほぼすべての会社から現地調査をお願いされると思います。
複数の会社から相見積もりを取ろうと思うと、そのすべての会社の現地調査に付き合わなければなりません。
管理会社が対応してくれる場合はいいですが、自主管理で大家自ら立ち合わなければならず、かなりの手間がかかってしまいます。
リフォームの現地調査ってなんでしないといけないの?電話1本で見積ってできないの??
今回は、そんな疑問に答えていきます。
結論:適正価格で依頼したければ現地調査は必須です
リフォームや大規模改修工事に「現地調査」がなぜ必要なのか。
その理由について、わかりやすく紹介していきます。
工事業者の見積もり作成手順
まずはリフォームを依頼された会社がどのように見積もりを作成するのか、大まかに理解しましょう。
例えば2DKの部屋を1LDKにリフォームする場合、次のような工事が発生します。
- 壁を解体する
- 解体した箇所の天井、床、壁を修繕する
- 壁、床、天井の壁紙、床材を新しいものに張り替える
工務店やリフォーム会社の見積もり担当者は、次のような手順で見積もりを作成していきます。
① 必要な数量を把握する
一つ目は工事に必要な数量を把握します。
この例の場合、「1.解体する壁の面積(m2)」や「2.修繕する天井、床、壁の面積(m2)」、「3.張り替える壁、床、天井の面積(m2)」などの数量を拾うことになります。
一言に2DKと言っても、その面積は物件によってまちまちです。
室内が狭い2DKは全体の数量も少なくなるでしょうし、独特な形状をした間取りなら解体する壁や修繕する箇所の数量(面積)が多くなることもあります。
見積の担当者はこれらの数量を現地調査を行うことで、把握しようとします。
工事によって発生する解体材の量も現地調査を行うことで、数量を把握することができるようになります。
② 仕様(材料)を把握する
仕様(材料)とはリフォームするグレードのことです。
壁であればペンキで塗装にするのか、クロスを張替えるのかなど、床であれば畳なのかフローリングなのかといったことです。
さらに細かく見ていくと、クロスの張替えも材料が高価なものから安価なものまで様々な種類が存在します。
これは畳やフローリングでも同様です。
現地調査をすることで、現在の部屋の仕様(材料)を把握することができます。
同じ内容でリフォームすると言われれば、その仕様を見積もりに反映させることができます。
付加価値を向上するために高価な材料を使うのであれば、現地調査の際にカタログやサンプルを持参して大家と打ち合わせすることもできます。
③ 作業環境を把握する
数量と仕様を確認できれば、最後に作業環境を把握します。
工事は当然ですが、人が行います。
作業環境によっては、その作業効率は大きく変わります。
- 敷地内駐車場あり
- 1階
- 解体材のストックスペースあり
このような作業環境の場合、職人が現場に到着するなりすぐに作業が開始できます。
解体した廃材もストックスペースに集積することで、搬出の手間を最小限に抑えることができます。
いっぽう、
- 敷地内駐車場なし
- 5階(エレベーターなし)
- 解体材のストックスペースなし
このような作業環境だと、職人が現場に到着してもまずは道具や材料を部屋の中に運搬するところから始めなければなりません。
利用できる駐車場が遠かったりすると、材料の運搬や道具の出し入れだけでも相当の時間が必要です。
解体材のストックスペースがないと、ごみが出るたびに駐車場まで廃材を運搬しないといけません。
エレベーターがなければ、重量物の運搬に専門の職人を手配しないといけない場合もあります。
このように作業環境が変わると、2~3割の作業効率は当たり前に落ちますし、下手をすると半分以下の効率になる場合もあります。
見積の担当者は現地調査で実際の作業環境をしっかり把握して、駐車場代などの必要経費や、作業効率による人件費への影響をしっかり反映させなければなりません。
現地調査をしない場合の見積作成方法
リフォームや大規模修繕は現地調査を行わなければ正確に見積することができません。
時には工務店やリフォーム会社が繁忙で、現地調査をする時間が取れない場合もあります。
依頼主の都合で現地調査自体を断るなんてこともあるかもしれません。
現地調査ができなかった場合、工務店やリフォーム会社はどのようにして見積もりを作成するのでしょうか。
① 数量を把握する
行う手順は先ほどと同じです。
まずは数量を把握します。…と言っても、これがなかなか難しいです。
賃貸物件であれば、募集用の間取り図がありますし、部屋の面積もある程度把握できていると思います。
しかし、これらの情報は数量を把握するには正確さに欠けています。
募集用の間取り図ぐらいでは、実際の寸法を測ることはできません。
見積もりの担当者は、「ここは1.5mぐらいかな、天井の高さは2.3mぐらいだろうな…」といった感じでおおまかな数量を算出するしかありません。
想像で算出した数量が少ないと、自分の会社が損をすることになります。
おのずとその数字には、「少ないと困るから、余分に50cmだけ数量を見ておこう」といったように余計な数量が加わることになります。
現地調査ができないと、正確な数字が把握できないために実際より多めの数量を計上する可能性が高くなります。
② 仕様(材料)を把握する
現地調査ができなければ仕様(材料)の把握ができません。
リフォームの内容が畳かフローリングかぐらいは判りますが、壁がクロスなのか塗装なのか、天井面はどうなっているのかというのは、大家へのヒアリングでは正確にはわかりません。
クロスと言っても、その種類はさまざまです。
数量と同じように見積担当者は損をするわけにはいかないので、ある程度高い仕様で見積もってしまいます。
現地調査ができないために、実際よりも割高な金額になる可能性が高くなります。
③ 作業環境を把握する
作業環境の把握も見積もりに大きく影響してきます。
住所や物件名、部屋番号を聞ければ近隣の駐車場や作業環境などはある程度把握することはできるでしょう。
駐車場の有り無しや、解体材のストックスペースなども電話でのヒアリングでわかるかもしれません。
ですが実際の作業のしやすさや作業効率を考えた場合、やはり見ていないというリスクがなくなりません。
現地調査をすればはっきりする疑問点も、「よくわからないし、とりあえず金額を見込んでおくか」といった感じで、不要な金額が膨れ上がってしまうことがあります。
現地調査をしないデメリット
現地調査をしない場合の見積方法を紹介してきました。
最後に、見積もり調査をしなかった場合のデメリットについて簡単に紹介しておきます。
1)コストが高くなる
ここまでの説明でわかるように、現地調査をしないと本来必要なコストより多めに金額を見込まなければなりません。
見えない数量や見えない仕様、見えないリスクのために支払われるコストです。
現地調査は依頼すると、大家にとっては立ち合いの負担が増えますが、適正な数量と適正な仕様(材料)を適正な作業で行い最適なコストを見積もるためには必要なことだと思います。
2)価格交渉ができない
複数社から相見積もりを取ったものの、現地調査をしていなければ価格交渉が難しくなります。
しっかりと現地調査をしている会社の見積もりには、次のように記載されます。
見積もり項目 | 数量 | 単価 | 仕様 |
---|---|---|---|
壁紙張替え工事 | 15m2 | 1,200円/m2 | サンゲツGD4909 |
数量や単価、仕様までしっかり明記されています。
いっぽう、現地調査ができていない会社の見積もりは、次のようになっていることが多いです。
見積もり項目 | 数量 | 単価 | 仕様 |
---|---|---|---|
壁紙張替え工事 | 1式 | 45,000円 | クロス張り |
現地調査できていた会社と比べて、工事の内容も不明確でどのような仕様(材料)を使っているのかもわかりません。
このような会社に、「ほかの会社より高いんですがもっと安くなりませんか??」と言ってもほとんど効果はありません。
向こうからしても「数量も仕様もわからないのに、どこを安くしたらいいんだ??」と思っています。
極めつけは、「この明細では数量や仕様がわかりません。どんな材料でどんな工事をするんですか??」といった質問をする依頼主もいます。
「いやいやそれはこっちが聞きたいです。どんな工事をしたらいいんですか??」と言われるのがオチです。
このような見積内容では、価格交渉はほとんどできないと思っていいでしょう。
3)追加工事のトラブルが発生する
現地調査をせずに行った見積では、追加工事のトラブルが発生する可能性が高くなります。
見積もり時点で考えていた数量や仕様(材料)、作業環境と異なる場合、かかった費用を追加工事として請求してきます。
「天井は塗装のつもりだったけど、クロス張替えに変更なっています。」とか「室内の凹凸が多くて、壁の面積が増えています。」などなど、現地調査ができなかったことによる、金額の増額分です。
追加工事をすんなり認める大家ならいいですが、「そんな金は一切払わない。」というような大家であればかなりもめます。
トラブルをなくそうと見積時点で確認しようにも、
- 壁紙張替工事 1式 50,000円
- 床張替工事 1式 60,000円
と書かれていれば、どのような工事をどの範囲で行うつもりなのかさっぱりわかりません。
かかるものはかかると言われてしまえば、払わざるを得ないのも事実です。
悪徳業者につかまってしまった、なんて業者だ!!
と腹を立てるのもわからなくもないですが、向こうの立場で考えるてみると、工事の途中で追加工事の請求をするのはあまり面白いものではありません。
変な大家にあたると、追加工事は認められません。
交渉がこじれると、そもそも本来の金額さえ支払ってくれない可能性もあります。
現地調査をしていない業者は追加工事でもめたくないので、当初の見積もりに見えないリスクを余計に見込むことになります。
依頼主から「もっと金額下げてよ」と根拠のない値下げ交渉をされても、なかなかうんと言えないのはこんなことが実情だったりします。
まとめ
今回はリフォームや大規模修繕工事に必要な「現地調査」について紹介しました。
結論:適正価格で依頼したければ現地調査は必須です
適正な数量、適正な仕様(材料)、適正な作業環境が把握できれば、適正な価格で工事を発注できます。
相見積もりの結果、コストをさらに圧縮することも可能でしょう。
しっかりと現地調査を行い、仕様(材料)について打ち合わせをしていれば工事中の追加工事も必要最低限に収めることができます。
なにより、工事を依頼する工務店やリフォーム会社と良好関係を築いて作業を依頼することができるため、次回の工事依頼もスムーズに行うことができます。
工事には現地調査は必要不可欠です。
それによって大家自らの時間を奪われることもあるでしょうが、不動産投資を円滑に行うためには必ず現地調査を行うようにしましょう。