不動産投資の減価償却をくわしく解説【上手に付き合いましょう】

こんにちは、マニです。

  • これから、不動産投資を始めたいと思っている人
  • 築古物件、土地値以下物件を探している人
  • 融資を受けて、物件を購入したい人

今回の記事は、こういった人向けです。

「不動産投資の勉強してると、減価償却って言葉がでてくると、、、減価償却ってなに?シミュレーションにどうやって反映させればいいかよくわからない。基礎知識から検討の方法を、詳しく教えてほしいです。」

こんな疑問に答えます。

今回の内容

  • 不動産投資の減価償却をくわしく解説
  • 減価償却との上手な付き合い方

私は、地方都市で、中古の木造1棟アパートを購入しました。
お宝物件ではないですが、今後、不動産投資をするうえで、まずは、間違ってない物件選びができたと思っています。

今回は、そんな私が、減価償却について、解説していきます。

目次

不動産投資の減価償却をくわしく解説

減価償却の説明は、以下の通り。

減価償却とは、長期間にわたって使用される固定資産の取得(設備投資)に要した支出を、その資産が使用できる期間にわたって費用配分する手続きである。
出典:Wikipedia

減価償却は、「魔法の経費」と呼ばれることがあります。

実際の支出が伴わないのに、損益計算から経費にできるため、このように言われています。

はっきり言って、この考えは間違いです。
今すぐ捨てましょう。

ペンと不動産の例で、経費計上の仕方を解説します

次の場合の経費を考えてみます。

ペンを購入する場合、

100円のペンを、1本購入。
その年の損益計算で、100円の経費を計上。

不動産を購入する場合、

2000万円の不動産を、1棟購入。(償却期間20年)
その年の損益計算で、2000万円÷20年=100万円の経費を計上。
その後、100万円×20年の経費を計上。

同じことを言っていることが、わかりますか。
減価償却と難しい言葉を使っていますが、要はこれだけです。

もう少し、詳しく説明します

ペンは普通に使えば、インクがなくなって、1年で使えなくなります。
ペンとしての価値がなくなり、価値がゼロになります。

そのため帳簿上は、次の通り。

  1. 「100円の現金」で、「100円のペン」を購入
  2. 「100円のペン」が1年間使って、「0円のペン」になった

ここで、覚えておいてほしいことは、「100円の現金」を使ったから、経費を計上したわけではないということです。
「100円のペン」の価値が、「0円のペン」になったことで、その差額の100円を経費計上しているんです。

仮に「100円のペン」が、「100円のペン」の価値のままだと、資産として「100円のペン」が残っているので、経費計上できません。
ちょっと、わかりづらいですか?

つまり、

「100円の現金 → 100円のペン → 0円のペン」
※100円の価値がなくなる

これで、「100円」を経費計上できるようになります。

不動産も同じです

同じ文面で説明すると

不動産は普通に使えば、建物が古くなって、20年で使えなくなります。
不動産としての価値がなくなり、価値がゼロになったことになります。

そのため帳簿上は、次の通り。

  1. 「2000万円の現金」で、「2000万円の不動産」を購入
  2. 「2000万円の不動産」が20年間使って、「0円の不動産」になった。

「2000万円の現金」が「2000万円の不動産」になり、20年経って「2000万円の不動産」が、「0円の不動産」になったたことで、その差額の100万円を20年間、経費計上したこということです。

全く同じですね。
ペンと不動産の違いは、価値がゼロになる期間が、「長いか、短いか」の違いだけす。

価値がゼロになる期間は、法律できまっています

これを、耐用年数といいます。

例えば、

  • 消耗品 1年
  • 事務机 5年
  • 車 4年
  • エアコン 13年

など。

不動産投資の場合、建物の構造で、その耐用年数は変わります。

  • 鉄筋コンクリート造 47年
  • 鉄骨造 34年
  • 木造 22年

減価償却は、この耐用年数から、減価償却期間を計算して、金額を計上します。

基本的な考え方は、ペンと同じです。
耐用年数が違うだけで、価値が減った分を、経費として計上しているだけです。

減価償却が、魔法の経費ではないということが、理解いただけましたか。

具体的に減価償却を計算してみます

私が、実際に購入した物件で、減価償却を計算してみます。

物件価格3600万円(建物1600万円、土地2000万円)

今回は、減価償却の説明のため、購入時の諸経費はすべて、初年度に経費計上することにします。
ここは、厳密には違いますが、それはまた、別記事で解説します。

手順1:減価償却期間の計算

減価償却期間は、耐用年数から計算します。

  1. 耐用年数を経過していない物件の場合
    耐用年数 – 経過年数 + 経過年数 × 0.2
  2. 耐用年数を超えた物件の場合
    耐用年数 × 0.2

今回の物件では、築13年の木造アパートなので、1.の式を使います。

1.の式 = 22年 – 13年 + 13年 × 0.2年 = 11.6年
※木造の耐用年数は22年

小数点以下は、切り捨てます。
よって、この物件の償却期間は、「11年」ということになります。

手順2:減価償却費を償却期間で割る

物件の価格を、償却期間で割ります。
ここで注意点ですが、物件の価格のうち、減価償却できるのは「建物」だけです。
「土地」は古くならないため、価値がゼロになることはないからです。

1600万円(建物のみ) ÷ 11年 = 145万円/年

私の物件は、「11年間」で、「毎年145万円」の減価償却を計上することになります。
減価償却の計算方法は、わかりましたか。
案外、簡単ですね。

ポイントをおさらい

  • 償却期間は、経過年数によって計算式が変わる
  • 減価償却費を償却期間で割って、毎年の減価償却費を計算する
  • 減価償却は物件価格のうち、建物の価格のみ計上する

減価償却との上手な付き合い方

減価償却の仕組みがわかったところで、その上手な付き合い方を、解説します。

収支にどのように影響するか、考えてみます

減価償却期間が違うと、収支にどのような影響が出るのでしょうか。

私の物件は築13年です。
同じ条件で、耐用年数の切れた、築22年の物件の場合と比較して考えてみます。

  • 家賃収入407万円
  • 空室率10%
  • 経費率20%
  • 家賃下落1%
  • 大規模修繕は考慮しない
  • サラリーマン大家の所得税+住民税が30%

築年数以外の条件は、私の物件でそろえました。

築22年の物件の減価償却費

2.の式= 耐用年数 × 0.2 = 22 × 0.2 = 4.4年(小数点以下切捨)
減価償却費 = 1600万円 ÷ 4年 = 400万円

キャッシュフロー(CF)の違い

まずは、キャッシュフローの違いを見てみましょう。
キャッシュフローとは、年間に実際に手元に残る現金のことです。
詳しくは不動産投資のキャッシュフローの計算方法の記事をご覧ください。

 「築13年」1年目5年目10年目15年目20年目25年目
年間のCF125万円46万円31万円-35万円-50万円154万円
CFの累計125万円272万円502万円408万円187万円974万円
 「築22年」1年目5年目10年目15年目20年目25年目
年間のCF199万円-5万円-20万円-35万円-50万円154万円
CFの累計199万円556万円485万円339万円118万円905万円

「築22年」は、5年目で「築13年」に比べて、キャッシュフローが多く取れています。
金額にして倍以上。
減価償却期間が短いと、5年目までで、大量の現金が手元に残ることがわかりますね。

5年目までのキャッシュフローの違い
次に、5年目までの収支を、細かくみていきます。

 「築13年」1年目2年目3年目4年目5年目
家賃収入-経費207万円209万円211万円214万円216万円
取得時経費-246万円
減価償却費-160万円-160万円-160万円-161万円-161万円
税引き前利益-106万円39万円42万円44万円46万円
所得税・住民税32万円-11万円-12万円-13万円-14万円
年間のCF125万円50万円49万円48万円46万円
 「築22年」1年目2年目3年目4年目5年目
家賃収入-経費215万円215万円215万円215万円216万円
取得時経費-246万円
減価償却費-400万円-400万円-400万円-400万円0万円
税引き前利益-426万円-183万円-183万円-183万円196万円
所得税・住民税128万円55万円55万円55万円-65万円
年間のCF199万円123万円120万円118万円-5万円

「築22年」は減価償却費が大きく、「税引き前利益」がマイナスになっていることがわかります。
「税引き前利益」がマイナスの場合、サラリーマンなど、ほかに給与所得がある方は、不動産と給与所得を合算させることができます。

総合課税 = 給与所得 + 不動産所得

これが、サラリーマンが不動産投資をすると節税になる、という話のカラクリです。
不動産所得のマイナスのおかげで、給与所得で支払った税金を、取り戻すことができるのです。

不動産投資をすると、節税効果があるという話の意味が、分かりますね。

減価償却が短いほうが損をする??

しかし、注目すべきは、償却期間の長い「築13年」のほうが長期的なキャッシュフローの累計が多くなっているという点です。

 「築13年」1年目5年目10年目15年目20年目25年目
年間のCF125万円46万円31万円-35万円-50万円154万円
CFの累計125万円272万円502万円408万円187万円974万円
 「築22年」1年目5年目10年目15年目20年目25年目
年間のCF199万円-5万円-20万円-35万円-50万円154万円
CFの累計199万円556万円485万円339万円118万円905万円

上の表を、おさらい。
10年目以降は「築13年」のほうが、「築22年」より、キャッシュフローの累計が大きいですね。

これは、なぜでしょうか。
実は、ここには「もうひとつカラクリ」があります。

ローン利息の経費を計上する方法

年間の経費の中には、ローン利息も含まれます。
私の場合、以下の条件で、ローンを利用しています。

  • 借入額3500万円
  • 借入期間20年
  • 利息2.0%
  • 元利均等方式

この場合の、年間の返済総額(元金+利息)は「214万円」です。
各年の元金と利息の割合は、次の通り。

1年目2年目3年目4年目5年目
元金145万円147万円150万円152万円156万円
利息69万円67万円64万円62万円58万円

ローン利息は経費に計上できるため、「税引き前利益」を抑えることができます。

ですが、ここであまり知られていないポイントが。
実は、

「税引き前利益」がマイナスの時は、土地分の利息は、経費計上できない

という、ルールがあるのです。
上の表の、ローン利息を、建物分と土地分に分けると、次の通り。

1年目2年目3年目4年目5年目
建物の利息32万円31万円29万円28万円27万円
土地の利息37万円36万円35万円34万円31万円

「税引き前利益」がマイナスになると、この土地の利息を経費に計上できなくなるんです。

特に、築古木造アパートで、土地値以下の物件は、建物の価値がほぼゼロなので、借入利息のほとんどが、土地の利息になります。

つまり、ローンがたくさん残っているうちに、減価償却で「税引き前利益」をマイナスにすると、せっかくの土地の利息が経費計上できなくなるということです。

利息を、経費に計上できないと税金の額が、増えます。
減価償却費を検討する場合は、このへんもしっかりと収支シミュレーションに反映させて行いましょう。

資産(減価償却)と損金(経費)の計上の仕方

すこし話がそれます。
「青色申告」を申請すると、たくさんの特典を受けられます。

その一つに、

資産(減価償却)のうち、一括で30万円未満のものは、全額損金(経費)に計上できる

というのがあります。

例えば、20万円のエアコンは本来、資産計上して、減価償却しなければなりません。
しかし、青色申告の特典で、その年にすべて損金(経費)計上できるようになります。

これを上手に使うと、利益が多い年に、設備更新をして、「税引き前利益」を抑えるといった方法もとれたりします。

私の場合の使い方

私も、「青色申告」しています。
減価償却については、少し変わった使い方をしました。

物件を購入した年に、インターネット設備も一新しました。
費用にして約29万円。ぎりぎり、全額損金計上できる金額です。

ですが、私は、損金計上せずに、あえて資産計上して、減価償却する方法をとりました。

その理由は、物件を購入した年は、購入時の諸経費が多くかかるため、その年の利益がマイナスになるかどうか、微妙なラインだったからです。

インターネット設備を全額、損金計上したがために、トータルで赤字になると、その分、ローン利息の土地分を、計上できなくなります。
土地の利息分もしっかり、経費計上するために、インターネット設備は資産計上して、減価償却(期間7年)をする方法を選びました。

税金の知識が必要

この辺は、税金の知識がないと、判断できません。
「いつ」「どのような」金額を経費として計上するかで、全体のキャッシュフローが大きく変わります。

払った金額は同じなのに、帳簿のつけ方次第で、支払う税金が変わってきます

大家の杖の一振りで、手元に残る現金が変わるんです。
まさに、「魔法の経費」ですね。

魔法を使うためには、勉強が必要だということです。

減価償却期間が短い物件は不利なのか??

では、減価償却が短い物件は不利なんでしょうか。
答えはNoです。

次にあてはまる人は、逆に有利に働きます。

  • ほかに不動産所得があり、トータルで「税引き前利益」がプラスになる人
  • 今後も、物件を増やしていく計画がある人

ほかに不動産所得があり、トータルで「税引き前利益」がプラスになる人

私の場合は、1棟のため「税引き前利益」がマイナスになり、土地分のローン利息が経費計上できなくなりました。

しかし、ほかにも不動産を所有していて、トータルの「税引き前利益」がプラスの人は、土地分もしっかり経費計上できるので、損にはなりません。
2棟目、3棟目として考えている人には、償却期間が短い物件でも、不利にはならないということですね。

今後も、物件を増やしていく計画がある人

もうひとつは、今後も不動産を増やしていく計画がある人です。
不動産を買い進めていくには、現金が必要です。

融資を引くにしても、ある程度の頭金が必要になります。
いっきに物件を増やしたい人には、減価償却の短い物件を購入すると、短期的に現金が多く残るため、頭金が貯まりやすいです。

ただし、長期的にはキャッシュフローが悪化することも、しっかりとシミュレーションして計画する必要があります。

まとめ

減価償却について、理解できたでしょうか。

築古物件は節税対策になる

と聞いて、わけもわからず、物件を購入しようとしていませんか。

しっかりと自分の頭で、仕組みを理解したうえで、シミュレーションをしっかり行い、間違いのない物件購入ができるように頑張ってください。

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