こんにちは、マニです。
「不動産投資を始めたいけど、絶対に損したくない。シミレーションして不動産投資の損益分岐点を見極めることはできますか。どんな指標を使って、判断したらいいのか知りたいです。誰か教えて。」
こんな疑問に答えます。
- 不動産投資の損益分岐点を考えてみる
- 実際の物件で損益分岐点をシミュレーション
- 不動産投資トータルの損益分岐点も考えてみる
私は、地方でサラリーマン兼アパート大家をしています。
物件を購入する前は、いろいろとシミュレーションをして、失敗しな不動産投資を志してきました。
今回は、そんな私が解説します。
不動産投資の損益分岐点を考えてみる
「損益分岐点」とは売上高と費用が等しくなり、損益がプラスマイナスゼロになる状態のことを言います。
損益分岐点を超える売り上げがあれば利益が生じ、下回れば損失が出ます。
不動産投資でも、空室期間が長かったり、修繕費などの費用が多くかかってしまうと、損失がでてしまいます
不動産投資の損益分岐点とは
不動産投資では、「利益」と「キャッシュフロー」という、二つのお金のとらえ方が存在します。
損益分岐点を考える場合も、それぞれのパターンで考えたほうがいいでしょう。
利益 = 収入 – 経費
キャッシュフロー = 収入 – 支出
「利益」は、物件そのものの稼ぐ力を表します。
いっぽう、「キャッシュフロー」は収入からすべての支出をひいて、手元に残った現金を表します。
ここの違いを、しっかり理解していないと、
- 利益は出てるのに、現金がたまらない
- キャッシュフローはあるのに、利益が出ていない
といった状況に陥ります。
「利益」と「キャッシュフロー」の違いについては、、別記事で解説しています。
理解できていない方は、こちらの記事で勉強してみてください。
実際の物件で損益分岐点をシミュレーション
今回も、私の購入した物件で、シミュレーションを実施してみます。
不動産投資は、長期的な視点で考える必要があります。
1年目の損益分岐点は、あまり意味がありません。
そこで、5年目、10年目、15年目の損益分岐点をシミュレーションしたいと思います。
物件の条件は、こちら。
- 物件価格 3600万円(建物1600万円+土地2000万円)
- 満室家賃 408万円(利回り11.3%)
- 経費率 20%、家賃下落 年1%
- 減価償却 145万円×11年
- 大規模修繕 5年後に200万円で実施
- 所得税+住民税 30%(税率)
今回のシミレーションでは、空室率を変えて売上高(家賃収入)を変動させることで、損失分岐点を探っていきます。
一般的に空室率は5~10%で設定する方が多いと思いますので、今回は空室率10%を標準的な運用と考えることにします。
シミュレーションの結果
表の見方として、空室率の項目の『緑色』でパーセント表示している項目が「キャッシュフロー」の損益分岐点です。
『灰色』でパーセント表示している項目が「利益」の損益分岐点を表しています。
5年後を例にすると、「キャッシュフロー」の損益分岐点は空室率26%、「利益」の損益分岐点は32%ということになります。
では、以上の結果から、各年の損益分岐点を検証してみましょう。
5年後
空室率が26%で、「キャッシュフロー」がマイナスになりました。
「利益」は空室率32%でマイナスです。
一般的な、空室率10%をキープできれば、キャッシュフロー、利益ともに、十分プラスを維持できることがわかりますね。
【ホームズ見える賃貸経営】によると、全国の空室率の平均は20%前後です。
また、【公益財団法人日本賃貸住宅管理協会「日管協短観(2017年度上期」】によると、管理会社が管理している賃貸住宅に限定すると、空室率の全国平均は6.2%という調査結果もあります。
ホームズで掲載されている、空室率は自主管理の物件や、賃貸募集していないような、いわゆる空き家も含まれているのではないかと想像できます。
管理会社に賃貸管理をお願いする予定の方は、10%を空室率の基準と考えても問題なさそうです。
いずれにしても、5年目で「キャッシュフロー」、「利益」ともにマイナスになるのは、全国平均の空室率を上回る、ダメダメ物件だけということがわかりますね。
家賃設定を適正に行い、必要な対策をしっかりとっている大家さんは、十分、「損益分岐点」を超えられる結果だと思います。
10年後
「キャッシュフロー」の損益分岐点が22%、「利益」が34%でマイナスになりました。
5年後に比べると、キャッシュフローの損益分岐点が、大きく下がりました。
ホームズの、全国平均の空室率と近い数値になりました。
これは、家賃が年に1%ずつ下がっているためです。
そもそもの売り上げが、減っているのが大きな原因ですね。
逆に、5年後の結果と比べて「利益」の損益分岐点は上がってます。
なぜでしょうか??
これは、ローン利息が原因です。
ローンの返済が進めば、元金の返済額が増え、その分、ローン利息が減ります。
ローン利息は経費になります。利息が減ると、利益が増え、結果、損益分岐点が上がりました。
ローン利息が減り、利益が増えれば、税金が増えます。
キャッシュフローが悪化する要因なので、あまり喜ばしいことではないですが、その分、残債の減るスピードも年々増えていくので、喜ばしい側面もあるのはあります。
15年後
キャッシュフローは、空室率10%でもマイナスになりました。
なんなら、空室率0%365日満室でも、まだマイナスです。
これは、減価償却が終了した11年目を境に、デットクロスにおちいっているためです。
私の物件の場合、デットクロスを迎えた12年目以降は、ローンが完済する20年目まで、なにをしてもキャッシュフローはマイナスになってしまいます。
デットクロスのついて、理解できていない方は、こちらの記事をご覧ください。
空室率86%でも利益がでる??
一方、「利益」の損益分岐点は、空室率が86%です。
ほとんど、入居者がいない、超ダメダメ物件ですね。
それでも、利益の上ではプラスを維持できるということです。
「いったい、どういうこと??」
と、思いますね。
これはなにも、15年目が特別なわけではありません。
不動産投資には、「減価償却」と言って、建物の経年劣化による価値の低下を、経費として計上してよいという、独特なルールがあります。
私の物件の場合、減価償却として年間145万円を、11年間も経費計上することができます。
この期間は、減価償却のおかげで、利益をぐっと下げることができます。
これは、不動産投資の大きな魅力の一つです。
15年目は減価償却が終わっているため、利益が元に戻り、損益分岐点が大幅に上がってしまいました。
少し、難しい説明になってしまいましたが、ここが「利益」と「キャッシュフロー」の違いであり、ここを理解できていないと、不動産投資では現金を残すことができなくなります。
減価償却について、理解できていない方は、こちらの記事をご覧ください。
21年後
私の物件は、20年でローンを完済します。
21年目からは、ローンの返済がありません。
21年目の「利益」と「キャッシュフロー」みると、金額が全く同じになっていることがわかりますね。
勘のいい方は気づいたかもしれませんが、不動産投資特有の「利益」と「キャッシュフロー」の違いというのは、「減価償却」と「ローン返済」が原因で起こります。
減価償却も終わり、ローンも完済していれば、『利益=キャッシュフロー』というシンプルな式が成り立ちます。
空室室10%の場合、税引き前利益が234万円になります。
その中から、がっつり70万円も税金をとられても、「キャッシュフロー」は164万円も残ります。
ここまで来ると、不動産投資が一気に楽になります。
苦節20年。はやくこの域に達したいです。
不動産投資は年金対策になる
仮に、この投資を45歳で仕込めば、定年を迎える65歳には家賃を年金に使うことができます。
しかも、アパートには定年がないので、建物が朽ち果てるまで、永久に家賃収入を稼いでくれることでしょう。
これこそまさに、年金代わりの不動産投資ですね。
(この言葉にひかれて、新築区分マンションなんて、決して買ってはいけませんよ)
21年後の損益分岐点
損益分岐点も確認してみましょう。
「利益」、「キャッシュフロー」の損益分岐点は15年目をさらに上回り、驚異の93%をたたき出しました。
私の物件は1棟8戸の物件なので、1年を通して、わずか1室に半年しか人が住んでいないといった状態です。
もはや廃墟ですね。
これだけを見ても、ローン返済のない賃貸経営が、いかに安定しているかわかりますね。
地主大家さんが、のんびりしているはずです。
資産家の地主大家さんの中には、物件購入時から、ほぼ無借金の人もいるかもしれません。
そういう人は、管理会社に物件を丸投げしても、一向にかまわないのです。
固定資産税対策、相続税対策はしっかりとれているので、家賃収入なんて正直どっちでもいいのかもしれません。
地主大家の中には、こんな土俵で戦っている人がいるのです。
サラリーマン大家が負けるはずないと思いませんか??
不動産投資トータルの損益分岐点も考えてみる
ここまでは、各年の損益分岐点を見てきました。
一般的な空室率が10%だと考えると、案外やれそうだと思いませんか。
次に、もう少し深堀して、損益分岐点を考えてみましょう。
不動産投資全体の損益分岐点を考える
一年のみではなく、不動産投資全体としての、損益分岐点がどこなのか考えてみます。
不動産投資全体の損益分岐点とは、不動産投資を始めてどれぐらいの期間投資を続ければ、赤字にならないのかを検証してみます。
要は、損切するタイミングで、いくらのマイナスになるかを検証するということです。
具体的には、次の条件を使って、損益分岐点をシミュレーションしていきます。
- 各年の空室率は10%とする
- 満室家賃の表面利回り15%で物件売却する
今の市況であれば立地さえ間違わなければ、表面利回り15%であれば、すぐに買い手は見るかるでしょう。
この売却価格から購入時の諸経費、売却時の仲介手数料、ローン残債を引いて手元にいくら残るかをシミュレーションしていきます。
シミュレーションの結果
表面利回り15%で売り出すと、3600万円で購入した物件がいきなり、2700万円で売却することになります。
誰もが、飛びつく金額設定です。
今回の検証はそれぐらい、厳しめな金額で設定しての結果です。
1年目で売却すると、1100万円の赤字です。
大損ですね。
5年目に大規模修繕をしているので、その分、5年目の手残りは少なくなっています。
9年目で、ようやくトータルの収支がプラスになりました。
表面利回り15%で売りに出すことを考えると、最低でも9年間は運用し続けないといけないことがわかります。
私の物件の場合、10年以上空室率10%で運用できれば、失敗しないということですね。
どうですか??
おいしいですか??おいしくないですか???
収支がプラスになれば
このかなり厳しめの設定でも、9年目を迎えるころには、頭金も含めた投資金額がトントンになります。
この期間まで持ちこたえれば、あとはどう頑張っても失敗しないということです。
空室率が増えたり、金利が上昇したり、何かしらの理由で不動産投資を終了しないといけない時でも、この破格の値段で売りさえすれば、投資した金額も含めていったんは回収できるということです。
10年目以降は、インカムゲインが積みあがるので、持てば持つほど資産が積みあがります。
大家のすることは、空室率を10%にキープする努力をするだけです。
そして、20年目以降は晴れて、160万円のキャッシュフローを手にすることができるようになります。
立地がそこそこで、しっかりと管理された物件であれば、空室率10%は楽にクリアできるでしょう。
条件設定は割と厳しめ
売却時の利回り15%というのは、かなり乱暴な数値です。
実際は、12~13%程度でも十分買い手は見つかると思います。
13%でシミュレーションした場合は、7年目。
12%の場合は、4年目にはトータルの収支はプラスになります。
表面利回り11.3%の物件でしっかりと管理ができれば、それぐらいの期間で、不動産投資全体の損益分岐点を超えるということですね。
これぐらいの期間で損をしないと考えたら、リスクをとれると思いませんか。
トータルの損益分岐点が把握できたら、あとは、その期間の間、歯を食いしばって運営していくだけです。
不動産投資は、現金がなくなればゲームオーバーです。
損益分岐点をしっかり把握して、現金が不足しないようにしっかり準備していきましょう。