現場監督が教える見積講座⑤いつでもどこでも同じ値段では買えない

こんにちはマニです。

サラリーマンをしながら地方でアパートを一棟所有しています。

本業は建築現場の現場監督です。

仕事柄、下請さんから見積もりをもらったり、お客さんに見積もりを提出したり、普通の人より見積もりに触れる機会が多いです。

建設業界では見積もりは立派な成果品です。

見積講座。第5回目の今回は建築工事の商品の値段の特徴について紹介します。

結論:建築工事はいつでもどこでも誰でも同じ値段で買えるわけではない』

日用品や家電、食料品などは「いつでも」「どこでも」「だれでも」同じような値段で購入することができます。

買う場所や時期によっては、普段よりお得に買えるときもありますが、その割合は1~2割程度と限定的です。

いっぽう、リフォームや大規模修繕工事などの建築工事は「いつでも」「どこでも」「誰でも」同じ金額で買えるわけではありません。

それどころか、「いつでも」「どこでも」「誰でも」違う金額になってしまうことがほとんどです。

今回はそんな建築工事の値段の違が生まれる理由について、わかりやすく紹介していきます。

目次

値段が違う理由① 建築工事は一品生産品

建築工事は一品生産品

家やマンションを建てたり、リフォームや大規模修繕などの建築工事は一品生産品です。

建築工事は、食料品や日用品のように同じ品質で同じ量の商品がスーパーに並んだりするようなことはありません。

ハウスメーカーの分譲住宅でさえ、設備のグレードや壁紙の種類、庭の広さなど中身が少しづつ変わっています。

お客さんが商品に求めるものもそれぞれで、そのときの要望に合わせて商品自体をカスタマイズして作っていくことになります。

一見すると同じような商品でさえ、細かいところを見れば違いがたくさあり、ひとつひとつ打ち合わせをしながら世界に一つだけの商品を作っていきます。

このように建築工事は一品生産品であるがゆえに、その商品の値段もカスタマイズして作り上げていくものによって金額が大きく変わっていきます。

値段が違う理由② 会社の数が多すぎる

会社の数が多すぎる

理由の二つ目は仕事を依頼できる会社の数が多すぎるということです。

一般的な商品では競合する会社の数は10社あるかどうか、どんなに多くても100社ぐらいが選択できる会社の数だと思います。

車であればトヨタ、日産、マツダから選べばいいですし、カップラーメンなら日清、東洋水産、エースコックで、ビールならアサヒ、キリン、エビスから選べばいいでしょう。

いっぽう、建築工事とその形相はガラッと変わってきます。

大型ビルや公共施設を建設するゼネコンと呼ばれる業界ではガリバー企業である最大手5社の売り上げを全部まとめても、全体の10分の1にも満たしません。

戸建て住宅を供給するハウスメーカーにしても、大手のメーカーをすべて足したところで全体の2~3割のシェアしかありません。

街を歩いていて目に入る建物の中で、名前の知れた大企業が建設したものは、実はごくわずかしかありません。

そのほとんどは地元の建設会社や工務店が建てたもので、リフォームや大規模修繕にいたってはいわゆる大企業が行うことはほとんどありません。

建築工事はどんなに小さい会社でも取引相手になる

食料品や日用品のメーカーにしても、ゼネコンやハウスメーカーにしても、商品を作るためには多くの協力会社や下請業者と取引をしています。

下請け業者にはさらに下請け業者がいて、1次下請け→2次下請け→3次下請け→4次下請けと、1つの商品は多くの企業に支えられて作り出されます。

ゼネコンやハウスメーカーなどの大企業になると、一つの商品を作るのに100社を超える下請け業者を使うなんていうこともざらにあります。

食料品や日用品は完成した商品をメーカーからしか購入することはありませんが、建築工事でが100社を超える下請け業者から直接商品を購入することがよくあります。

車はトヨタからしか買いませんし、カップラーメンは日清からしか買いません。

一般の人がデンソーやその他の下請け業者から商品を買うことはほとんどありません。

いっぽう、建築工事では元請のA建設からも、1次下請けのB工務店からも、2次下請けのC電気からも、3次下請けのD塗装からも商品を購入する可能性があります。

商品の選択肢が数社程度しかない一般の商品と比べて数百社、下手をすると1千社を超えるような業者に仕事を依頼できる建築工事は商品の値段がその企業の数だけ存在すると言えます。

値段が違う理由③ 見積金額が「時」と「場合」によって変わる 

見積金額が「時」と「場合」によって変わる 

食品や日用品の値段を決める方法と違い、建築工事では「その時」、「その場合」によって金額が変わります。

全く同じ商品の見積もりを行っても金額が2~3割違うのはごくごく当たり前で、中には2倍、3倍も金額が違うことがあります。

これは、

  • いつ見積もりを行うのか
  • 誰に見積もりを行うのか
  • どのように見積もりを行うのか

など、様々な要因が絡み合って起こります。

1軒隣の会社に頼んだだけで2倍、1か月後に頼んだだけで2倍、雨が降ったら2倍、電話口の対応を変えるだけで2倍…

冗談のような話ですが、これはいたって普通の話です。

それだけ、建築工事の見積もりは生ものであり、買う場所や鮮度によって金額が大きく変わることになります。

関連記事:現場監督が教える見積講座③|建築工事は足し算で商品の価格を決める

値段が違う理由④ 売ってるいるのは職人の時間

売ってるいるのは職人の時間

建築工事って、究極的には何を売っていると思いますか?

サービスでも商品でもなく、「職人の時間」です。

日用品や食料品は工場で作り、倉庫や店舗に保管してその売れるときを待っています。

いっぽう、建築工事はその日の職人の時間を商品として売っています。

当然、時間の在庫がなければ商品は売れません。

需要が多く、職人が引っ張りだこの時期は値段は吊り上がります。

建築会社は赤字で工事を受注する

建築工事では赤字で工事を受注することがよくあります。

赤字なら仕事なんか受けなきゃいいのに。損をするだけでしょ?

たしかに赤字になりますが、現実は少し違います。

建築会社が職人を一人を雇うのに1日に1万円必要だったとします。

職人1日分の仕事を1.5万円で提供できれば、5千円の利益が生まれます。

需要のある時期は、この仕事を2万円でやってほしいという人も出てくるでしょう。

いっぽう、需要が少ない時期には1万円でも依頼する人がいなくなり、8千円でしか仕事を受けられなくなる時もあります。

そんな時、この建築会社が思うところとしては、

8千円では赤字になるから、仕事を受けるのはやめよう

ということではありません。

1日1万円で職人を雇っているので、

8千円でもいいから仕事を受けて、職人に給料を払ってあげないといけない…

そんな風に考えています。

そのため仕事が少ない時期はたとえ赤字になってでも、職人の時間を提供して売り上げを上げようとするのです。

日用品や食料品は1万円で買う人が現れるまで、倉庫や店舗に在庫を抱えておくことができます。

需要のない時期に1個も商品が売れなくても、需要がある時期に100個でも1000個でも商品が売れれば、売れなかった時期の売り上げまでカバーすることができるかもしれません。

しかし、職人の時間を売っている建築工事では在庫を抱えることができません。

需要がなければ、8千円でもいいから職人の時間を売りたいんです。

そうしないとその日の職人の時間には0円の価値しか生まれません。

建築工事が時期によって、金額が大きく変る理由はこんなところにあったりします。

まとめ

今回は、建築工事は「いつでもどこでも誰でも同じ金額では買えない」理由について紹介しました。

結論:建築工事はいつでもどこでも誰でも同じ値段で買えるわけではない』

建築工事は生ものです。

提供する会社も大なり小なりさまざまあり、その数も多すぎるほど存在します。

提供する商品も、お客さんの要望にあわせて大きく形を変え必要なコストもその時その時によって変わってきます。

建築工事の値段は、これらの要素が複雑に絡み合って「その時」「その場所」「その人のみ」の金額が決まります。

同じ金額なんて言うものは存在しません。

このことを肝に銘じて、見積もり徴収をしていってみてください。

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