こんにちはマニです。
サラリーマンをしながら地方でアパートを一棟所有しています。
本業は建築現場の現場監督です。
仕事柄、下請さんから見積もりをもらったり、お客さんに見積もりを提出したり、普通の人より見積もりに触れる機会が多いです。
建設業界では見積もりは立派な成果品です。
第3回目の今回は見積もりを取るうえでとても大切な視点、「商品の価格の決め方」について紹介します。
『結論:日用品は割り算、建築工事は足し算で商品の価格を決める』
商品の価格の決め方は、業界によって異なります。
食料品や日用品などの商品と、リフォーム工事やアパートの建設工事ではその決め方が異なります。
日用品とリフォーム工事の商品の価格の決め方から、商品を安く購入するポイントを勉強していきます。
今回の記事を読めば、リフォーム工事や建物の新築工事がどのように価格を決めているのか理解できると思います。
ケーススタディー①:日用品を販売する
まずは一つ目のケースとして、日用品を販売するときのことを考えてみましょう。
シャンプーや洗剤、化粧品などをイメージしてもらえればいいと思います。
日用品を製造するには、次のような費用が必要です。
- 原料代
- 人件費
- 工場の維持費
- 配送料
- 販売手数料
これらの費用と販売する商品の価値を考えて、商品の価格が決められます。
日用品などの価格は、いつでもどこで誰でも同じ価格で購入できるという特徴があります。
『商品の価格×実際に売れた個数=売上げ』となり、『売上げ』から費用を引いたものが企業の利益になります。
日用品の利益の計算方法
日用品を販売する場合、次のような形で企業の利益が生まれていきます。
- 原料代 500万円
- 人件費 200万円
- 工場の維持費 100万円
- 配送料 100万円
- 販売手数料 100万円
これらの費用をあわせた合計1000万円で、10万個の商品を作り、1個150円で販売したとします。
10万個すべて売れれば、利益は500万円で商品1個あたりの利益は『50円』です。
8万個しか売れなければ、利益は200万円で商品1個当たりの利益は『20円』まで下がってしまいます。
このように、日用品を販売する企業の利益は決められたコストで生産した商品を何個売れるかで決まります。
生産に必要な費用も変動する
商品を生産するにあたって、原料代や人件費など必要な費用が高騰することもあります。
これらが原因で、必要な費用が1000万円から1300万円に上がった場合、商品が10万個すべて売れても1個当たりの利益は『20円』まで下がってしまいます。
8万個しか売れなかった場合は、1個当たり『10円』の赤字になることもあります。
しかし、日用品などはよほどのことがない限り商品の価格を変更することはできません。
いつでもどこでも同じ値段で買える日用品でも、その時、その場所で得られる利益の額はさまざまに変わっているんです。
日用品を安く買う方法
では、日用品を安く買おうと思ったらどんな方法があるでしょうか。
日用品の価格を決める費用の中身をもう一度、見てみましょう。
- 原料代
- 人件費
- 工場の維持費
- 配送料
- 販売手数料
この中で消費者の努力で安くできる項目は、実は「配送料」と「販売手数料」ぐらいなんです。
大型量販店は商品を大量に仕入れるので「配送料」を抑えられます。
決算前や大売出しの目玉として「販売手数料」をゼロにして販売するお店もあるでしょう。
いずれにしても、日用品の価格の大きな割合を占める「原料代」や「人件費」、「工場の維持費」は消費者の努力で、安くする交渉ができません。
ケーススタディ②:リフォーム工事を販売する
2つ目のケースはリフォーム工事の商品の価格の決め方を紹介します。
これは日用品の商品の価格の決め方とは大きく異なります。
リフォーム工事などの建築工事は、1件の工事に必要な費用はすべてその1件の価格として計上されます。
リフォーム工事には、主に次のような費用が必要です。
- 原料代
- 人件費
- 配送料
リフォーム会社はこれらの費用を算出して、その費用に企業の利益を上乗せして商品の価格を決定します。
日用品と違い、見積もりを提出した時点である程度の「利益の額」が見込まれています。
リフォーム工事の利益の計算方法
リフォームのような建築工事は、次のように利益を計算します。
- 原料代 10万円
- 人件費 10万円
- 配送料 2万円
費用の合計は22万円で、これに利益を上乗せして「25万円」という形で商品の価格を決定します。
商品の価格は、そのときの原料代や人件費によって変動します。
原料代や人件費がが高騰して、費用の合計が30万円になれば、商品の価格も「35万円」まであっという間に上がってしまうということです。
いっぽう企業努力により、原料代や人件費を安く抑えることができれば、ダイレクトに価格に反映され安くすることも可能です。
商品の価格は日々大きく変動する
日用品はいつでもどこでも同じ価格で購入できるのが特徴でした。
いっぽう、リフォーム工事などの建築工事は「いつでもどこでも同じ価格で買えない」のが特徴です。
全く同じ商品でも、東京と地方では金額が異なります。
夏に買う場合と冬に買う場合でも金額が異なりますし、下手をすると昨日と今日でも金額は大きく異なります。
ネットやSNSで、「このリフォームが10万円でできました!!」という工事でも、別の人が全く同じ内容で頼んでも全然違う金額になるのはそのためです。
この「いつでもどこでも同じ価格で買えないこと」については、次回の講座で詳しく紹介します。
商品を安く購入するためのポイント
今回紹介した2つのケースで、商品を安く購入するためのポイントはどこにあるでしょうか。
日用品を安く買う方法
日用品を安く買うための項目は「配送料」と「販売手数料」だと紹介しました。
すなわち安く買うためには「どこのお店で、いつ買うか」がポイントだということです。
安売りチラシを持ってスーパーをはしごしたり(どこのお店)、新製品の販売前に型落ち品の家電を購入する(いつ買うか)などの努力で商品の価格を下げることができます。
- 原料代 500万円
- 人件費 200万円
- 工場の維持費 100万円
- 配送料 100万円
- 販売手数料 100万円
しかし日用品の価格を決める費用のうち、「配送料」や「販売手数料」が全体に占める割合はわずかです。
そのため、日用品を安く買うためにどんなに努力しても、下げられる金額は10~20%が限界ということになります。
リフォーム工事を安く買う方法
リフォーム工事を安く買うための項目は、「原料代」や「人件費」がメインです。
安い原料を選んだり、作業の手間や効率を上げて人件費を抑えることで金額を安くすることができます。
- 原料代 10万円
- 人件費 10万円
- 配送料 2万円
商品の価格を決める費用のうち、「原料代」や「人件費」が占める割合はとても大きいです。
そのため上手に交渉できれば、商品の価格を半分にすることも可能です。
逆に何も気にせず見積もりを依頼すると相場の2倍、下手をしたら3倍の金額がでてくるなんて言うこともざらにあります。
相場もわからず、相見積もりも取らずに工事を依頼すると、本来は圧縮できたかもしれない費用を余分に払わなければならないこともあるので注意が必要です。
見積について理解を深めることの重要性
これまで紹介してきたように、日用品はいつでもどこでも同じ値段で購入することができますが、安いところを一生懸命探しても、値下げの幅は限定的です。
逆にそこまで努力しなくても大きな損をしないとも言えます。
いっぽう、建築工事はそうはいきません。
何も知らずに、1社のみから安易に見積もりを取ってしまうと相場から大きくかけ離れた多額の金額を請求される可能性もあります。
このような失敗は複数社から相見積もりを取ることである程度解消できます。
建築工事の見積もり徴収がいかに大事なことが理解していただけたでしょうか。
まとめ
今回は、リフォーム工事の商品の価格の決め方について紹介しました。
『結論:日用品は割り算、建築工事は足し算で商品の価格を決める』
あなたが受けようとしている商品やサービスの価格のつけ方を理解しておくことは大切です。
建築工事は日用品のように、いつでもどこでも同じ金額で買える安心な価格設定がされているわけではありません。
ときにはぼったくりと呼ばれるような、金額で損をすることもあると思います。
この「現場監督が教える見積講座」を通して、正しい見積もり徴収の方法を習得して、失敗しない商品購入力を身に着けていきましょう。